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夢のなか —

「夢のなか」


それから童話作家になったと言った。
南條裕子という筆名で書いていると言って、
図書室の本棚からその童話を探し出して私に見せてくれた。


淡いブルーの表紙に愛らしいペンギンのすかし模様のある
かなり分厚い本だった。
私は、うらやましくて悔しくてしょうがなかった。
強烈な嫉妬を彼女に対して感じてしまっていた。
それを悟られるのが、気恥ずかしくて
わざと、平気なふりをして、
「すごいわーなんか私もすごくうれしいわ」
なんて心にもないことまで言ってのけていた嫌な私だった。
「うれしくて、なんか泣けてきたわ」
そういって私はついに泣き出した。


たぶん私は、
うれしくて泣いたのではなく、うらやましくて泣いたんだ。
「本を出す」
私がかなえられなかった夢を
いとも簡単にかなえてしまっている
彼女のことが
とてもうらやましくて、そしてまぶしくて
泣いてしまったんだと思う。
「この本ぜひ読んでみたいわ。借りれるかな?」
そう言ってはっとした
借りれるわけがなかった。
すでに私は、そこの学生ではない。
「買うわ、絶対買う。出版社と題名覚えておいて
絶対買うからね。」
彼女に向かってそう言いなおした。
彼女は、ニコニコ笑っていた。
私は、さりげなくその本の値段を見た。1900円だった。
「高い。やっぱり買わんとこかな」
と心の中で一瞬買うのをためらった自分がなんか嫌だった。
それから夫に起こされて目が覚めた。

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